ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

ただし、アメリカは京都議定書に批准していないことで、京都メカニズムを適用することができない。従って、京都メカニズムの効用にも限界はある。アメリカが現在京都議定書から離脱していることは国際社会全体の憂鬱な課題であり、今後国連だけでなく各国が一丸となって、取り組む必要がある12。次に、第二の懸念事項である「温暖化対策のための技術の不足」に対してもCDMが再び有効な対策となる。CDMは途上国のGHG削減を行った先進国にクレジットを与えることで、途上国への技術移転を促進させ、南北格差縮小に貢献するシステムとされている。さらにCDMは技術の移転だけなく、無電力地域の電化による生活の質の向上や、地域雇用の促進という副次的効果も生み出す。その一方で、後発途上国のようにGHG排出量が少なく、削減ポテンシャルの低い国においてはCDMが発展しにくいことから、南南格差の拡大の原因になるのではないかとの疑問の声もある。(図7参照)この問題に対しては、1ホスト国自身の制度的キャパシティの構築を行う、2従来のCDMよりも手続きの少ない小規模CDMの拡充、3新興経済国と後発途上国間のクレジット発生量に差をつけ、先進国に後発途上国におけるCDM事業展開の動機を与える、ということが対策として考えられる。最後に、中国・インドのみならず、途上国に共通した問題「資金不足」に対しては、国連主導の「基金」の運営が必要となる。COP13においても「適応基金」の運営方法に合意がなされ、他にも各国が独自に設立した基金が存在する。しかし、それぞれの基金が重点を置く対象は異なり、連携が取れていない。加えて、多くの基金は先進国の任意の拠出のため、一つ一つの基金が行う支援には限りがあり、途上国のニーズに答えることはできない13。(表4参照)従って、各基金の整合性をはかり、連携して資金援助を行うことで、途上国の必要とする支援を可能とするのではないだろうか。以上の3点の国連の役割をより詳しくまとめたものが【表3】になる。59212 現在アメリカは、日本の打ち出す「セクターアプローチ」を前向きに検討している。このことからも、アメリカに関しては各国間で妥協点を模索して交渉を続けることが重要となるであろう。13 国連環境計画(UNEP)が2001年2月に発表した報告では、2050年にCO2の濃度が2倍になると、繰り返される異常気象や海面上昇による土地の喪失、漁業や農業への悪影響、水不足などで年間3000億ドル(約35兆円)以上の損害が発生すると予測している。