ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞このように、京都議定書は実効性の低い「シナリオE」という結果が出たが、2013年から発行される次期枠組みポスト京都議定書はまだ交渉の段階にあり、より実効性ある枠組みを形成することが望まれる。では、ポスト京都議定書は最も望ましい「シナリオA」もしくはシナリオAに近い位置に近付けることがはたして可能なのだろうか。続けて次の項で検証する。3.ポスト京都議定書への期待と現実――シナリオAは実現可能か現在、2012年に終了する京都議定書の次の国際枠組み「ポスト京都議定書」に向けた国際交渉が進んでいる。この国際枠組みは、現在のシナリオE以上かつシナリオAに少しでも近い枠組みとなり、地球温暖化への有効な手立てとなるのであろうか。COP13とその後の各国の主張を整理し、果たして現在どのシナリオへと向かっているのかを検証する。以下、【表2】に各国の主張をまとめているが、はじめに表の概要を説明する。附属書Ⅰ国の日本は、ダボス会議で福田首相がエネルギー効率の目標値について言及したものの、米・中・印の参加を促すことを最優先としているため、GHG削減目標の具体的な数値は打ち出していない。EUは、「先進国により厳しい目標値を課し、中国とインドも同様の義務を負うべきである」と述べ、削減目標数値の設定を重視している。他方アメリカは、自国の削減数値約束に反対しており、途上国に関しても自主目標の設定に言及するにとどめている。また、過去の脱退した経緯もあるため、自国に不利な枠組みとなった場合、再び批准しないことも懸念される。非附属書Ⅰ国の中国とインドは、先進国には数値約束を課すべきだが、途上国に関しては、自主目標の設定にとどめることを主張している。アメリカ同様、中国とインドも自国に不利な目標が課された場合は未批准・脱退を表明する可能性が、無きにしもあらずである。最後に中国・インド以外の途上国、特に小島嶼国は、「死活問題である温暖化問題に中国やインドのコミットメントも不可欠である」と強く主張している。587