ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

それでは、現在の枠組みである京都議定書は、いずれに相当するのだろうか。以下の項で検証する。2.6つのシナリオから読み解く京都議定書の功罪京都議定書は6つのシナリオのいずれに相当するのだろうか。京都議定書は、第一約束期間である2008年から2012年にかけて、先進国全体のGHGを90年比マイナス5%にすることを目的としており、177の国と地域が批准している。GHG削減対象となるのは、1994年の気候変動枠組み条約でOECD加盟国並びに市場経済移行国を対象とし定義づけられた附属書Ⅰ国であり、全批准国の排出量合計の61.6%をしめている。この附属書Ⅰ国以外の国々(途上国)は非附属書Ⅰ国と総称される。京都議定書は、経済活動と環境改善を結びつけ、地球温暖化を各国の重要課題に押し上げることに貢献した点において、非常に意義深い国際枠組みであるが、一方で様々な問題点を内包している事もまた事実である。この項では、京都議定書が先述のどのシナリオに当てはまるかを検証し、その不備をあぶりだす。(1)未批准国の有無まず、縦軸の「未批准国の有無」の視点から検証する。京都議定書の場合、附属書I国の中で最大の排出量を誇るアメリカが、2001年3月に脱退を表明した。アメリカは2004年時にはCO 2換算で58億7400万トン排出しており、これは世界で約256億トン排出されるGHGの22.1%を占める(表1参照)。その他の附属書I国上位排出9か国の排出量を足しても、アメリカ1国に及ばないことからも、アメリカの参加しない枠組みの実効性の低さが指摘される。従って、京都議定書は「未批准国の有無」に注目した場合、アメリカの存在により【図2】の下半分、つまり「シナリオD・シナリオE・シナリオF」に相当することになる。582