ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞する条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty:NPT条約)の場合、核保有国であるインド、パキスタン、そして疑惑国であるイスラエルが加盟していないために、核不拡散の実効性に疑問が生じている。このことからも、強固な枠組み形成のためには、利害関係にあるすべての国の参加が不可欠であるということが見て取れる。特に地球温暖化の場合は、「環境」というすべての国に関わる問題であるため、未批准国のいない状態がもっとも望ましい。そして第二の条件は、問題に対する有効な対策を打ち出していることである。地球温暖化の場合は、破局的な被害を避けるために大幅なGHG削減の必要性が国際的に認識されていることからも、その削減に対する有効な数値目標が必要となる。特に主要排出国への削減義務が重要である。それでは、この2つの条件を軸として考えた場合、どのような国際枠組みが想定されるだろうか。以下ではまず縦軸を第一条件の「未批准国の有無」とし、次に横軸を第二条件の「有効な数値約束の有無」として、この2本の軸をもとに、6つのシナリオを設定する。(図1参照)その上で、それを基に実効性ある枠組みの具体像に迫ることとする。6つのシナリオとは、縦軸と横軸を基に、枠組みの実効性の優劣を想定したものである。下記の図からも分かるように、もっとも望ましいのはすべての国が参加し、有効な数値約束が課されるシナリオAであり、今後はいかに国際枠組みを、このシナリオAに近付けるかが重要な鍵となろう。逆に最も望ましくないのは、未批准国・脱退国が出現し、更に有効な数値約束がまったく課されないシナリオFである。【図1:国際枠組みのシナリオ】未批准国無シナリオCシナリオFシナリオBシナリオEシナリオAシナリオDシナリオAシナリオBシナリオCシナリオDシナリオEシナリオF未批准国がなく、すべての国が参加する枠組み。すべての主要排出国がGHG削減の数値約束を負う。国際社会が一丸となって温暖化対策を講じた場合を想定したシナリオで、温暖化防止の実効性が最も高い。シナリオA同様、すべての国が参加する。だが、数値約束が今一つ不十分であり、実効性にやや欠ける。シナリオA、Bと同様、すべての国が参加するが、有効な数値約束がまったく課されない。主要排出国に対し有効な数値約束を課すが、未批准国または脱退国が出現する。数値約束が今一つ不十分であり、且つ未批准国・脱退国が出現する。各国の交渉の末、有効な数値約束がまったく課されず、更に、未批准・脱退国が出現する。このシナリオは、地球温暖化改善の実効性が最も低い枠組みとなる未批准国有581