ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
570/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている570ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

(4)気候変動枠組み条約と京都議定書の位置づけそれでは、以上のような3つの条約グループと気候変動枠組み条約や京都議定書の位置づけはどうなるであろうか。従来の枠組みの条約の中では、排出権取引、技術開発、発展途上国との国際協力などすべての事項をカバーしてきたが、実際には敵対的関係が露呈され成果に乏しかった。したがって、これまでの枠組み条約や京都議定書は、世界全体で協力できる分野に限定して、排出権取引、技術開発、途上国との国際協力の問題は、それぞれの条約グループに委譲することとする。そこで、気候変動枠組み条約・京都議定書の役割は、第一に情報交換の場とし、各条約における取り組みを集約し、各国の取り組みに関する認識を深める場とする。第二に、定期的な各国の環境担当大臣の会合の場とする。定期的会議の開催で、政治的重要性が保持できる。そして第三に、排出権取引をモニタリングする場とすることである。具体的には、排出権取引が各国の温暖化ガスの削減努力を阻害するためのシステムにならないよう監視機能を強めていくことである。3.複数の条約によるアプローチは先進国のイニシアティブが必要以上のように、複数の条約によるアプローチは、利害関係者が個別問題に参加できることで「WIN/WIN」な連合が形成される。たとえば、オゾン層の保護条約では、デュポンがオゾン層破壊物質の代替物質を開発し、この需要を開拓するために条約推進の立場に回った。このような構造をつくりあげることが、将来において温暖化対策の実効性を確保するために不可欠なのである。経済学では、「コモンズの悲劇」という用語があるが、地球環境のような公共財について、世界がフリーライドしようとする結果、資源が枯渇して環境破壊が促進されるという考え方があるが、それは必然ではないのである。今後、オゾン保護条約と同じような形で、削減を目指す国々と産業との「連合形成」は必須であり、むしろ、現行の京都議定書の交渉を、興味を同じくする国だけが交渉に参加するような実態像に即した形で枠組みを再構築することは喫緊の課題である。このような複数の条約によるアプローチは、重要な先例がある。たとえば、欧州の酸性568