ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
559/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている559ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回最優秀賞地球温暖化対策をめぐる複数の条約によるアプローチと国連の役割澤田公徳要約京都議定書は、冷戦後の希望に満ちた世界秩序を提示する絶好の機会であった。地球の安全と世界の平和繁栄のため、各国が協力して問題解決にあたる新しい世界秩序の形成に期待が高まった。しかし、この理念の実現が危ぶまれている。京都会議の議長国として自ら不当なCO2削減義務を背負い込んだ日本。負担による経済停滞を回避すべく議定書を離脱した米国。各国の国益が複雑に錯綜する中で、たった今でも地球環境破壊は進んでいる。今、国連に求められているのは、国際的合意である京都議定書を持続可能性の高いレベルに引き上げていくことである。しかし、国際的合意を推進するあまり、交渉次第では解体するリスクも孕んでいる。地球温暖化問題は、複雑で困難な課題であるが世界が共同して取り組む問題であり、後戻りすることはできない。だとすれば、国連は、どのような形で将来の地球温暖化対策の制度的枠組みを再構築することが求められるのか、それを検討していくことが本稿の課題である。結論をいえば、制度的枠組みを再構築していく方法として複数の条約によるアプローチが考えられる。「共通利益」を共有する条約グループを形成することで、個別問題の実効性を確保する手法である。そして、現行の気候変動枠組み条約と京都議定書で想定されていた課題は条約グループの目標に移行させ、現行の枠組み条約の役割は、それらの条約の実効性を高めるための支援的機能を担っていくこととする。ここで重要なのは、このような複数の条約アプローチの並存は、お互いに排他的ではないということである。むしろ、こうした共存体制が制度的にイノベーションを引き起こす可能性が高く、相互に強化され557