ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

一方、都市の過密は、地域の環境問題として都市熱問題(ヒートアイランド現象)、都市瞬間最大降雨(スコール)に伴う洪水、下水道の高温化に伴う衛生環境の悪化や伝染病の危険増大。すでに逼迫した問題として各種廃棄物の問題があり、それらは自治体の境を越えて処分されている。また、速水氏の研究によれば、江戸時代の都市の住人は短命であり、今後予想される医療制度の逼迫にともなって、都市住民の寿命短縮が問題になる可能性がある。また、2章で触れた、過剰な要求の喚起は、都市部の屋外広告などにも顕著に現れ、大量販売、大量廃棄の温床になっている。さらに地域コミュニティーの崩壊などにより、犯罪増加などの可能性も秘めている。三-二過疎と過密のから見えてくる将来の可能性しかし、過疎と過密は各地域の環境問題にとって、メリットをもたらしている可能性が否定できない。まず過疎地域においては、自然の回復に伴う緑地面積の増大、特定作物の栽培放棄による自然種(植物体系)の復活、農薬被害の減少、河川や大気の浄化、野生生物の復活。さらには、(豊かな自然のもと出生率が常に日本一である沖縄県のことを考慮すれば)理想的な子育て環境の実現の可能性などが考えられる。過密も公共サービスの効率化、インフラ整備の容易、コジェネレーションなど導入による省エネルギー、人及び物資の移動距離の短縮、廃棄物収集効率化などメリットが十分あることがわかる。なぜ、現在の日本においては、過疎と過密の弊害ばかりが目につくのだろか。過疎地域においては、戦前から戦後間もない頃の、人口が増加していたころの行政システムの維持による、住民への過剰なサービスが目に付き、マスコミの報道対象となり問題が一方的に語れていることに起因する。しかし、本質的な部分でも、過疎地域での過大な行政サービスの維持は、様々な無駄の存在を意味し、財政の視点だけでなく省資源、省エネルギーの観点からも問題があるはずである。過密地域においては、本来環境政策上メリットを発揮するべき地域が、無計画かつ無秩序な都市の拡大・開発され、その恩恵を享受できない状態にある。それどころか、過密状546