ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

人口問題解決に向けて国連は何ができるか中村愛一、はじめに今、地球上には64億人の人々が暮らしており、約40年後には90億人を超すといわれている。この爆発的な人口増加は今に始まったことではない。1814年に世界の全人口は10億人に達し、それから1929年に20億人、60年に30億人、74年に40億人、89年に50億人、そして99年に60億人と徐々に人口増加は進んできている。当初は人口増加が人類にとって死活問題になるとは考えられなかったであろう。欧米では、人口数が国力であると同時に幸福の尺度と、所謂人口国力説の考えが広く浸透していたのである。しかし、200年以上も前に、T. R.マルサスが『人口の原理』の中で人口問題について重要な見解を示している。マルサスは、「人口は幾何学級数的に増加する一方で食料は算術級数的に増加するので人口と食料のバランスが崩れ、食糧不足に達する。更には、戦争、貧困、疫病、飢餓が発生するであろう」と諭している。このマルサスの理論は人口問題を考える上で古典となっており、更に人口学の基礎ともなり、現在でも大きな影響を与えている。そして、マルサスが人口論を記してから約170年後の1972年にローマクラブは『成長の限界』の中で、このまま拡大する人口の増大や経済活動を放置してしまえば、100年以内に地球上の成長は限界に達し、人類の経済生産システムや地球上の生態系は崩壊、食糧生産の減少が起こりその結果、生活水準の低下と死亡率の急上昇により人口の急減という破局を迎えるであろうことを主張した。これらから分かるように、人口増加の問題は見過ごすことのできない大きな問題の一つであり、様々な問題を生み出すのである。それでは今現在、世界は人口の爆発的な増加によって引き起こされた問題とどう対峙しているのであろうか。そして、今迫り来る問題を対処するために、これから我々には何が530