ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

田・横関9)。実現の可能性が高く、援助される国もやる気があるため初等教育が比較的早く広まる傾向にある。それに対し、結果がなかなか現れない国にも援助を行っているのがユネスコの寺子屋運動である。早く効率的な支援だけでなく、遅いが着実な支援も必要であり、その意味で2種類の支援があることは良いといえる。ただし、後者にはより多くの資金が必要になるため、財源確保が重要な課題である。国連では自発的拠出金というシステムが分担金とともに取られており、その金額は各国の裁量に任されている。残念なことに、自国の経済状態の悪化や、何かが起きると削られてしまうことが多い特徴をもっている。自発的拠出金を増やしてもらうためには、マスメディアを利用し、国際世論の力に頼って各国の意識を向上させる必要がある。自発的拠出金が多いことが国際社会でより評価されるようになり、インセンティブとして働くことが必要になる。また、個人の寄付を増やすためにも資金がどのように使われたのかを目に見える形で伝えていく必要がある。金額を報告するだけではなく、予防接種何人分、学校に行けるようになった子どもが何人というほうがわかりやすい。これはもうすでにされていることだが、その情報がより多くの人の目に着くようにポスターを増やすなどさらなる広報活動が必要である。これは多くの人から少しずつ寄付金を得るのに有効だが、少数の人から多額の寄付金を得るには、減税などの奨励策を積極的に使うことも考えられる。MDGs達成のための財源は、人々が目標を共有し、寄付によって目標達成の協力をすることが求められる。先進国での便利な暮らしをしている人にとっては途上国の生活に関心を持たずに過ごしてしまう人も多い。とくに、アメリカやヨーロッパと違い「ノブレス・オブリージ」(持てる者の義務)という概念が薄い日本などでは、積極的広報活動による問題意識の向上が必要である。508