ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

た軍事力の多寡が当該国の新国力向上にいかほどの貢献を期待できるだろうか?そうした新国力を構成する諸々の要素を相対化する視点を世界の人々ができるだけ沢山共有して初めて、核の政治力・外交力が根源的に問い直されるのではないか。9.日本は国際機関等を経由した経済貢献に徹すべし核の政治力・外交力を洗い直す作業に、日本はどのようにかかわればよいだろうか。例えば日本が目下国連の場で最も力を入れている常任理事国入りを早期に実現して、国際的な発言力を確保したうえで、改めて「地上唯一の核の被爆国」という被害者の立場から、国際世論に訴えるべきだろうか。筆者にはそれは順番が違うと思われる。理念としては「戦争は人間存在にとって最大の罪であり、その遂行手段である核・武器類を生み出す行為は人類への挑戦である」ことを粘り強く国際世論に訴え続けるほかない(その意味で、高坂が敢えて言及を避けてきたカントの永久平和論は、依然として戦争の違法化の理念的な淵源であり、戦争を遂行しようとするあらゆる思念や方法論に対する最大の砦としての価値をいささかも失ってはいない)。しかし行動としてはまず、「国際社会で尊敬されるには、武力、経済力など従来型の国力概念では不十分で、協調力などソフト・パワーを最大限に生かせる」ための国際貢献の実績作りに努めるべきであろう。具体的には、日本が戦後アジアで進めた民間部門活性化のための投資環境整備など日本型の政府開発援助(ODA)モデル(東大の原洋之介氏らは「開発問題を政府部門と民間部門の動的な連携のなかでとらえるという優れた発想」と評価している:日本経済新聞2005.8.12付け経済教室から)を、国単位ではなく、国連など国際機関か東アジア共同体(未だ具体的な形はないが、その種の地域連携プログラム)との共同プログラムとして、他の発展途上地域でも実施してゆく。プログラムの実施にあたっては、その成果が当該地域構成国の新しい国力の向上にいかに役立つかをアピールする、教育プログラムが並行して実施される必要がある。1国単位のパワー・ポリティックスに代わる新しい国益概念でつながったリージョナル・ポリティッ488