ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

を行使しても特定国を意のままにコントロールし得ないことは、誰の目にも明らかだ。恐らく地球温暖化をめぐる主導権争いの中で、米国も近い将来民間企業を中心とした要求に屈する形で政府も重い腰を上げ、世界的な枠組みに参画して行くだろう。言い換えれば、「世界第何位・・・」的なランク付け即世界に通用する権威、ではなくなりつつある。20世紀まで世界に通用してきたのが、ランク付けに基づく国力の序列だったとすれば、21世紀に通用する尺度は「自国の能力なり魅力で他国を味方につける力」「協調力」といった、単純な序列では表しようがない国力概念、ということになろう(J・ナイは前者をハード・パワー、後者をソフト・パワーと名づけた)。因みに、従来型のボリューム、経済力で世界を序列化したのが図表4である。統計制約から数値がやや古いことや、そもそも国家のボリュームと企業規模とを横並びで比べることに意味があるのか疑念を抱く向きもあろうが、国民国家の地盤沈下を表しているのは間違いないであろう。以上の温暖化防止をめぐる国際的な対応に、その主役が民間企業なり地域共同体であることに、そして既存の国家概念そのものが根源的な問い直しを迫られていること等に、パワー・ポリティックスの象徴としての“核の外交力”を見直す契機が含まれていなだろうか?確かに、昨年後半から動き出した民生用核燃料の多国間管理構想(図表1を参照)は、従来型の国別対応とは異なる局面打開への期待を抱かせる。だが、それらを推し進める最終的な意志が国家である限り、“核の外交力”の呪縛からは抜け出せないのではないか?8.ソフト・パワーを重視し、新たな国力概念の提示を国の序列、ハード・パワーの維持にしがみつき、総力戦体制を国民に強いてきた従来型の国力概念はもはや時代遅れである。その象徴としての核の脅威を振りかざした力の論理による国際社会への接近法も時代錯誤の所作である。だが、残念ながら命題としては正しい(であろう)こうした論理も、ひとたび国際会議等で政治家なり外交官の演説を通じて語られると、あまりにも空疎な響きしか持ち得ないのは何故だろうか?何故世界の人々の心を捉えられないのだろうか?(逆に言えば、世界の貧困撲滅をめぐる会議で、ハリウッ486