ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

れるあらゆる手立ての総動員が求められるなら、武力以外の体系を引っ張り出すのは当然であろう。高坂の理解とは裏腹に、理想主義とは極めて具象的な行為であり、掲げる理想像と現実とのギャップを冷静に見据えながらの限りない往復運動である、というのが筆者の理解である(哲学者カール・ヤスパース流に言えば、恐怖(武力)に基づく平和を脱却して法(価値)に基づく平和に移行するための最大の条件は、現存する社会の個人すべてが、世界で起こる出来事と関係していると感じ始めることであり、持続する想像力を持つことである。だが、それはインターネット等ハイテクがもたらしつつある情報の同時性の獲得と非対称性の解消だけでは不十分である。また、高坂が指摘した「努力が何の成果をも生み出さないことを深く反省していない」ひとたちは平和主義者ではあっても理想主義者ではないだろう)。「利益(経済)」の体系に移ろう。5.ヒトはパンのみにて生くるに非ず、されどパンなくば争いは絶えず世の中、鶏が先か、卵が先かで議論が分かれるテーマは多い。国際政治の世界でもしばしば取り上げられるのが、「テロをはじめとする組織的な暴力と貧困(経済)問題とは、どのような因果関係にあるのだろうか」という根源的な問いかけである。2005年夏、東京・国連大学で開かれた「世界文明フォーラム」では、感染症対策、貧困撲滅、環境保護など地球規模の問題解決に、国際機関の改革を求める意見が続出した。国連に代わって国家間の利害が錯綜する問題に対応する新組織の設立を唱える声が出る一方で、国連のタガが緩めば米国の単独行動主義が加速しかねない、との警戒感を露わにする論調も目立った。そんな中、関係国の意見が比較的一致したのが、国際社会が率先して取り組むべき課題の選定だった。例えば、「テロ組織は貧困を利用し、人々を暴力に駆り立てている。彼らへの警戒を怠ってはならない」との中東関係者の声は、参加者から多くの賛同を得た。図表2は、世界の主要地域別に見た1日当たり1ト?ル前後で暮らす人々の比率(全国民に482