ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回佳作以下のように要約する。個々の文化(文明)は全く均質であり、互いに対立し、透過性を欠く。それ故に文化(文明)を互いに結びつける文化(文明)間の交通や出来事は、紛争以外の形態を持ち得ない。そこから必然的に導かれるのは、文化・文明間に寛容の精神が介入する余地はなく、あるのは相手を完全に屈服させるまでの永久闘争であり、目的達成には手段を選ばない強固な意志である。共存共栄が“空疎な理想主義”である以上、片や超大国は圧倒的な軍事力を行使し、虐げられた民は当然の権利として自爆テロをはじめとする聖戦の遂行に命を賭ける、というお定まりの図式が待っている。その延長にテロの目的達成のための最も効果的な武器として、核兵器の使用が想定されるのは極めて“現実的”だろう。4.現実主義に代わる理想主義の復権こそ「恐怖と敵を作り出す文化」が支配する現代世界の核の拡散と核軍縮ぶりを、高坂はどう評価するだろうか?現行NPT体制とそれが抱える大きな欠陥を、彼はどう理解するだろう?今に生きる現実主義者たちと同様、凡人でも目指せる平和の実現を望むなら、対症療法としての欠陥だらけのNPT体制の堅持を強く勧めるだろうか?核拡散の根本原因を、ある一つのものに絞り込めないのは事実だろう。多様な要素が時間をかけて複雑に絡み合った結果として今の状況がある以上、敢えて皮相的な対処法(核の保有国をこれ以上増やさない、という現状維持路線)を選ぶのは賢明な行為かもしれない。だが、これで未来は本当に開けるのだろうか?核の廃絶に向けての不断の努力に向かうベクトルが生まれるだろうか?高坂自身、「戦争は恐らく不治の病であるかもしれない。しかし、我々はそれを治療するために努力し続けなければならない」と苦しい告白をしている。それなら何故、彼は国家を支配する体系としての「武力」の体系にのみ対症療法的な効果を認め、武力とともに挙げた「利益」そして「価値」の体系の追求には解決の糸口を見出そうとしなかったのだろう?戦争(紛争)が、人類が存続する限りなくならない業病であり、治療法には考えら481