ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

国には北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリア、アルジェリア、ブラジル、アルゼンチンなどが加わる。しかしNPT上の核保有国はあくまで当初の五カ国である)、2原子力技術の平和利用を加盟国の「奪い得ない権利」として認める、という抜け穴-などだ。1について言えば、現実主義者は次のように反論する:既存保有国にのみ核兵器の保有を認めるのは不平等そのものだが、一旦平等にすればインド、パキスタンなどのような(核実験を繰り返し実施する)国が急増し、核兵器拡散防止の努力は無に帰す。核保有国を限定するという意味では、不平等はやむを得ない。「地上からの核の全廃」が当面空想に過ぎない以上、これ以上の核の拡散を防ぐ努力こそ、抽象的な平和ではなく具体的な平和を実現するための「次善の策」というわけだ。NPTは一方で既存核保有国という世界の「警察官」に行動の自粛、核軍縮を進めることを強く求めている。現実は先に紹介したランドの報告書にもある通り、警察官の自覚に一切が委ねられており、軍縮の歩みはカメのそれに近い。否、むしろイランや北朝鮮に核開発の即時中止を迫る米国では、自国にあっては「冷戦型の核兵器は時代遅れ」との認識の下、新たな核インフラの開発、砂漠の地下約300メートルのトンネル内で老朽化したプルトニウムのサンプルを、核連鎖反応を起こす寸前まで加圧する「未臨界実験」を行う準備に追われているとの報道もある(THE WALL STREET JOURNAL,2005.12.14号など)。技術開発力が国際政治の在り様を空洞化しているのだ。2が「ならず者国家」に核クラブ入りを目指させる格好の口実になっていることは自明であろう。しかも、「自由主義」の牙城を自認する米国はグローバリズムこそが世界に富と繁栄をもたらすとの信念の下、ヒト・モノ・カネ・情報などあらゆる資源の地球大の自由で迅速な流通を可能にする体制作りを推進してきた。その結果が、核兵器製造に関わる技術や人材などハード・ソフト両面からの既保有国からの散逸を生んだことは、歴史の皮肉としか言いようがない。こうした現象としてのグローバリズムを思想面から支えるものとして、ハンチントンに代表される米国発の「文明の衝突」史観がある。反ハンチントン派の急先鋒であるマルク・クレポンはハンチントン的な世界の解釈を、480