ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回佳作することで合意した。条約調印に当たってブッシュ・米大統領は、「(この条約は)長い対立の時代に終止符を打ち、全く新しい関係を切り開いた」と高らかに宣言した。同条約も本文中に、「1968年の核拡散防止条約」「91年の米ソの戦略攻撃兵器の削減及び制限に関する条約(START条約)」「2001年の戦略的問題に関する米ロ首脳による共同声明」等、過去の両国の戦略攻撃兵器の“共同管理”をめぐるたゆみない努力の成果の積み重ねのうえにモスクワ条約が発効した旨を明記している。だが、モスクワ条約調印と相前後して、米国の政府系シンクタンク、ランド研究所は分厚い報告書を発表、米ロ両国の関係の改善にもかかわらず、米ロの偶発的核戦争の危険性はこの10年間(START条約調印から)でむしろ拡大している、と警告した。報告書が偶発的核戦争のシナリオとして挙げているのは次の三つだ。1「ならず者」司令官、あるいはテロリストが意図的にミサイルを発射する、2訓練中の事故やシステムの故障で間違ってミサイルが発射されてしまう、3攻撃を受けていると勘違いをした側が、「反撃」を命令してしまう。そして、ロシアの経済・社会状況の混乱が事態を一層悪くしている、とも報告書は指摘している。もちろん、その後のロシア経済は破局に陥ることなく世界経済への同化を何とか実現しつつある。さらには、報告書の作成者であるランドが軍部の委託を受けた研究を行っている点等を割り引いて読む必要があるが、我々の頭上にぶら下がっているダモクレスの剣が、決して「ならず者国家」タイプばかりではないのは事実だろう。3.グローバリズムがもたらす負の遺産としての核拡散しばしば指摘されてきたことだが、現行のNPT体制は発足当初から致命的な欠陥を抱えてきた。その際たるものが、1五つの核(兵器)保有国(米ロ英仏中)には手をつけないで、新しい国にのみ核の保有を禁止する、という不平等(実態的には五カ国の他にウクライナ、カザフスタン、イスラエル、インド、パキスタン、南アフリカの六カ国が核を保有するか、かつて保有してきた時期があったと見られる。また、開発中と見られる(た)479