ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回佳作核拡散は地球環境問題である-日本は経済貢献通じて新しい国力概念を提示すべき上村千明要約核軍縮は冬の時代を迎えた。潜在的な核の保有国はその多くが顕在化に向けて走り出し、思想的・民族的な寛容観の希薄化の中で、偶発的な核戦争はむしろその危険性を高めている。核拡散防止条約(NPT)は今や、1970年の条約発効以来最大の存亡の危機に直面している。グローバル化はそうした流れを拡大こそすれ、決して押し留めることはないだろう。だが、問題は解決されるためにある。現下の核軍縮論の混迷は一にかかってあまりに“国際政治的アプローチ”、あるいは“現実主義”に立脚したアプローチに拘った結果であると考える。「核拡散は優れて地球環境問題であり、その解決には経済的なアプローチを主眼に置いた新たな国力を模索する視点が不可欠」との代案を提示したい。およそ“宇宙船地球号”1という限られた時空間に生存する人類にとって、核やその他の人類殺傷兵器は地球温暖化原因物質等と同様時空間の環境を著しく破壊し、瞬時か緩慢な死かはともかく、人類の存在そのものを否定する危険性をも内包している。核の拡散と核軍縮の遅延がもたらす負の効果を以上の視点から捉えるなら、我々はそれらを阻止する権限を、旧来型の力の論理に基づいて序列化された国民国家のコントロール下に置くべきではない。代わりに、国際連合という現存する唯一の“宇宙船地球号”の司令塔、ないしは国連から委任された国際地域共同体に委ね、超国家単位の核の拡散防止・核の廃絶とそれに見合う経済的厚生向上策の導入を抱き合わせる方式が効果的であろう。以上の問題設定に関して日本が取るべきスタンスは何か?「地球上唯一の被爆体験国」1 地球全体を一つの宇宙船と見なし、そこに生息・生育するすべての生き物を乗船客とする考え方。すべての乗船客の将来を保証し、確保するためには、今すぐ何らかの全地球的な行動を起こすことが必要であり、そうしなければならないとの認識と危機意識から、「国連人間環境会議(通称:ストックホルム会議)」が1972年に開催された。475