ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

せた。このためわが国などは北朝鮮問題を念頭において、脱退国に対して加盟中に提供された技術や施設の返還を要求するなどの制裁措置を提案、北朝鮮を非難する文言が合意文書に盛り込まれることを目指し、ロビー活動を展開してきた。だが、各国とも北朝鮮の違反行為への対処の必要性では一致しながらも、「核兵器国の核軍縮は進展しないのに、制約を更に課されるだけ」と不満を強める非同盟諸国や、NPT未加盟のイスラエル問題を取り上げたい中東諸国の思惑も絡み、合意には至らなかった。条約の存在意義に関わる違法行為に明確なメッセージを出せなかったことで、核拡散防止の動きは今後、米国が中心となった有志連合など条約外の場で活発になってくると予想される。その点からも、今後PSIの重要性は高まると考えられる。すなわち、NPT体制の信頼性と権威の維持・強化のために各国が新たな決意を持って核拡散に取り組んでいくべきことはもちろん重要であるが、それ以外の道として核開発を抑止できるような具体的活動を担保しうる組織とコンセンサス作りを構築していく必要性が新たに生じてきているということである。兵器は絶対量が過剰であれば管理に隙間が生じやすくなる。したがって、軍縮は不拡散のための必須条件である。またテロを阻止するためにおいてもこれは同様であろう。そのためには多国間主義の復活と全会一致手法によるすべての政府のオーナーシップ意識を引き出していかなければならない。14したがって各国が共通の価値観として軍縮及び不拡散を追及することは大前提である。その上で、各国は軍縮不拡散への協力をコンセンサス事項として、対応及び関連措置を粛々と進めて行かなければならないであろう。いずれにしても、今日我々はまさに核拡散とテロの脅威の下に晒されており、不安定な国際社会の中にいるということを、各々常に強く認識していなければならないことは間違いない。47414猪口邦子、「軍縮外交からの理論的示唆」『JAIR Newsletter』103号(2004年9月)、1ページ。