ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

化学兵器の拡散だ」と指摘した上で、「米国は同盟国と協力して、不審物を積んだ航空機と船舶を捜索し、違法な兵器やミサイル関連物質の移転阻止に向けた新たな協定策定に着手した」と述べ8、「拡散安全保障イニシアチブ(Proliferation Security Initiative : PSI)」と呼ばれるひとつの新構想を発表、日本を含む十カ国(日、英、伊、蘭、豪、仏、独、西、ポーランド、ポルトガル)に参加を呼びかけ、国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器等関連物資の拡散を阻止するために、参加国が共同して取りうる措置を検討しようと提案したのであった。この提案は前年6月に開催されたG8カナナスキス・サミットで採択された「テロリストまたはテロリストを匿う者による大量破壊兵器または物質の取得を防止するための原則」を大きな契機とするものであった。尚、この時点においては、PSIは大統領による構想の発表のみで具体的な中身については何ら言及されなかったが、同年9月4日にパリで行われた第3回PSI会合において発表された「阻止原則宣言」9でその概要が明らかになった。その内容の詳細については省略するが、「PSI参加国は、国内法並びに国連安保理を含む関連する国際法及び国際的な枠組みに従い、大量破壊兵器の拡散懸念国等からの輸送を阻止するためのより調整され効果的な基礎を構築する」ということを土台にし、1陸上、海上、航空等、様々な形態の阻止訓練の精力的な実施、2参加国・協力国の拡大に向けた努力、3各種会合を通じた活動内容の精査、などが主たる内容である。端的に言うのであれば、各国が自国の法律や資源を活用して、互いに協力しながら、危険な技術が拡散国家及び拡散に関心を持つ非国家組織へ、あるいはそうした国や組織から、陸、海、空を介して輸送されることを阻止しようとする広範なパートナーシップのことである。それ故PSI自身は、他の拡散阻止対策にとって代わるものではなく、決して新しい概念ではない。したがって、PSIの構築に尽力したボルトン米国務次官が、「(PSIは)組織ではなく行動であり、したがって、本部も無ければ事務局も無く、もちろんそれに関わる役職に就いている人もおらず、別立ての予算措置もとられていない」10と、PSIが各国の具体的協力の下で成り立つものである旨の説明をしているのも、なるほどと頷ける。4708TheWhiteHouse,RemarksbythepresidenttothepeopleofPoland(May31,2003).9The White House Fact Sheet, Proliferation Security Initiative Statement of Interdiction Principles (September 4,2003).10 平成16年10月27日、東京アメリカンセンターで行われたボルトン氏(当時は軍備管理・国際安全保障担当米国務次官)の講演(Stopping the Spread of Weapons of Mass Destruction in Asian-Pacific Region : The Pole of theProliferation Security Initiative)における発言より。