ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回佳作合、国家側はテログループの要求を受け入れざるを得なくなる、という最悪と呼べる事態が容易に想像できるのである。今日の核管理状況これらテログループが横行する危険な国際環境の中で、核の管理は変化してきているのであろうか。まず第1に指摘できることは、拡散防止にその重点を置きつつあることである。冷戦期は、概ね、バランス・オブ・パワーの理論に従い、国家間の軍事バランスをとることを最大の目標として、軍備管理を行ってきたが、今日では、国家間の軍事バランスよりも、むしろテログループへ兵器、特に核をはじめとする生物、化学などの大量破壊兵器や最新精密兵器などが渡らないようにすることを最大の目標としている。特に米国は、9.11テロに遭遇して以来、脅威認識を「テロと大量破壊兵器が結びつくこと」と結論づけて、大きな注意を払っている。4第2は、これらテログループなどへの拡散を防止するため、規制の対象を兵器そのものから、武器を構成する汎用品などへと大きくシフトさせていることである。これは兵器が拡散していくのを食い止めても、技術や技術者の流出を食い止めることが非常に困難なためである。もしテログループが技術・技術者及び汎用品を手に入れることができれば、いくら兵器そのものの拡散を防止しても元の木阿弥となってしまう。そこで、技術があっても製造できないように、テログループの武器汎用品入手を防止しようというのが、その大きな狙いである。現在では、これら不拡散のための輸出管理レジームとして、1原子力専用品と汎用品及びそれに関わる技術を管理するNSG(原子力供給グループ)、2生物・化学兵器の関連汎用品及び技術を管理するAG(オーストラリア・グループ)、3ミサイル本体及び関連汎用品と技術を管理するMTCR(ミサイル関連技術輸出規制)、4通常兵器及び関連汎用品と技術を管理するWA(ワッセナー・アレンジメント)、などが相互に連携を取りつつ、テログループなどへの兵器拡散を食い止めている。加えて、テログループに対する資金を絶つという観点から、2001年9月には国連安保4 United States Department of State,“Patterns of Global Terrorism 2001”, May 2002, pp.63-68.467