ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

いないことから、ブッシュ政権は自らの希望に反してそれほど前回と異なった立場にいるわけではない。現在の交渉の中心課題は、いかにして北朝鮮のプルトニウム核兵器開発を断念させるかということである。これは核兵器の脅威を減じるためと、WMD拡散を防止するためである。次に来る問題が過去の核開発の検証であり、北からの第三国に対する技術移転を防ぐことである。したがって、HEU問題を暴くことは交渉の中心課題ではない。ただし、HEUの証明や肯定のいかんにより、枠組み合意をどちらがさきに破棄したかが論点となり、政治・外交上の重要なゲームとして意味を持ち続けるのである。また、HEU問題の浮上で、世界における核拡散の可能性が相対的に高まり、アメリカはそれに対し、より強い脅威を感じていることも注目すべきである。今回のHEU疑惑で明らかになった核の闇市場は、WMD不拡散を目指す米国の今後の取り組むべき課題の大きさを明らかにした。現在は、膠着状態にありつつも、現状維持のアクターの思惑、アメリカのハードルのより高い要求、北朝鮮の核開発の進行によりむしろ危機エネルギーが蓄積してきている状態である。同時に、米朝両者が枠組み合意に戻る事を望んでおらず、予測可能な合意の着地点が遠のいたことが挙げられる。当事者が膠着状態の打開を真に望まない限り、着地点は容易に見つからないだろう。*参考文献<英語文献>・George H. W. Bush and Brent Scowcroft. A World Transformed, Vintage Books. 1999.・Victor Cha and David Kang. Nuclear North Korea: A Debate on Engagement,Columbia University Press. 2004.・James Mann, The Rise of the Vulcans: the history of Bush’s War Cabinet, PenguinBooks. 2004.456