ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

アメリカのリーダーシップと核拡散防止―北朝鮮核危機を例に―第22回優秀賞三浦瑠麗はじめに一般に核兵器の拡散防止を考えるとき、それがいかなる立場から主張されるのかによって非常に大きな意味合いの違いが生じてきた。というのも、核撤廃を不可能とする大国中心の、不平等な核管理レジームと、それに対する非核保有国ないし核敷居国の反発とが、議論をしばしば膠着状態に陥らせてしまうからである。さらに言えば、これほどまでに人類に心理的影響を強く及ぼしてきた兵器はおそらくほかにない。核拡散防止への取り組みは、主に、地球市民レベルでの平和運動の一環としての取り組み、国際組織を中心にした多国間の取り組み、アメリカなど特定の国によるリーダーシップ外交による取り組みの三つに分かれてきたといえよう。地球市民レベルでの取り組みは、特に核兵器の非人道性、圧倒的な破壊力などを訴えてきており、非常に力強い国際世論を形成しているものの、政策や国家間外交に対しては明らかに無力であることが指摘されてきた。多国間で行われてきた、核不拡散条約(NPT)およびIAEAを中心とした不拡散体制、および原子力資機材の輸出管理を目指す原子力供給国グループ(NSG)の取り組みなどは、大きな成果を挙げつつも、やはり北朝鮮やイランなどの核保有の意図を完全に抑えられていないし、取り組みの枠外に存在する国に対する強制力がないために、不十分なものにとどまってきた。他方、アメリカ主導の不拡散のイニシアチヴであっても、途上国・非核保有国対核保有国といった図式に変換されて議論が膠着化し、または北朝鮮の核問題の再燃に見られるように、必ずしも効果的なものではなかった。国家単位で見た場合、核拡散の問題とは、ひとつには核保有に対する国家の意思が問題となり、もうひとつには、核の闇市場に見られるように、輸出管理や国内管理の体制の不439