ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

4.現行核エネルギー平和利用技術の苦悩現行の核エネルギー平和利用技術は、図1(A)のようにこの20年間は1次エネルギーの6-7%提供に停滞している。不可欠だから多大の努力で維持に努めているが、A核拡散、B安全性、C核廃棄物、D経済性に問題があり、世界に喜んで受け入れられているとは言えない。A核拡散の主因は、核燃料となるウランU235やプルトニウム(Pu)の放射能が弱くて監視管理が困難であり、さらにそれら入手のためのウラン濃縮および化学再処理技術が軍用・非軍用で共通だからである。B安全性では、多重の防護策を講じても過去の大災害の記憶のほかに、多重事故からの災害不安を拭えない。C核廃棄物は、固体核燃料体の製造・再処理・再製造などに伴う放射性物質、特にPuなどの超ウラン元素による汚染物質の多量発生とその長期貯蔵が難点である。D経済性では、複雑精密な装置やシステムであるのと、さらにA、B、Cが関係して高価となるからである。これら全てが改善できねば、社会に喜んで受け入れられる産業にはなりえない。その解決には、?ウランではなくトリウム(Th)を利用し、?固体でなく液体核燃料を使用することである。?トリウム(Th)利用:実は核燃料サイクルには2種類あり、実用されているウランープルトニウム(U-Pu)サイクルのほかにトリウムーウラン(Th-U)サイクルというのがある。Thから新しいU233というU235以上に良い燃料ができるのを利用すれば、U235やPuと縁が切れ、強烈な放射能で軍用にならない(次章参照)。?液体核燃料使用:既存の原発は皆固体核燃料体を使っている。Th-Uサイクルで適切な液体核燃料に替えるならば、1放射能による変質・破壊がなく、2燃料追加は自由だから余分な核分裂性物質は不要で、制御棒もほぼ不要となり、3常圧で高温の液体を使い、漏れれば核燃料がなくなるから炉は止まり、その液体は冷えれば安定不燃なガラス固化体とする。4気化性で放散されやすい放射性物質は常時分離し、炉内に置かず安全にする。5全核燃料サイクル内を1液体が循環するのみで余り人手を掛けないから作業量は減り、422