ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第22回最優秀賞止に努めた」という理由で、ノーベル平和賞が授与された。核拡散防止政策の新たな対応として、ウラン濃縮と使用済み核燃料再処理工場新設の5年間凍結や核燃料国際管理バンク構想を提唱する等「核の番人」として、IAEAの指導力に期待しているからでもあるが、前途多難である。【核拡散に対する日本の政策】2005年夏、日本ではより透明性のある公開討議を加えて、新しい「原子力政策大綱」を決定した。従来のウラン軽水炉核燃料サイクルの路線継承を宣言し、今後の原子力の水準を現在あるいはそれ以上に長期間維持しつつ、再処理工場の再開、高速増殖炉の50年後の実用化などを盛り込んだ基本政策大綱である。足下の揺らいでいる日本のエネルギー確保のために、堅い決意で当面の原子力の位置づけを決めたのは評価出来る一面はある。しかし核拡散問題には何ら具体的な提案もなく、不確実性のある高速増殖炉開発やバックエンドの将来についての姿勢は明確でない。日本は、非核3原則を表明しているが、米国の核の傘下即ち米国の核の抑止力に頼っているから、核抑止などの国際的な提言や主張には賛成できず、ことごとく棄権しているようである。核廃絶を唱えながらも米国の核の傘下で再処理工場を再開させ、平和利用に名を借りて潜在的に核保有している実態を、他国の尺度からはどう見られているか、慎重であらねばならない。それをしっかりと認識したエネルギー政策こそが、国際社会に融和し日本の安全および国益にも即した行動となる。日本が核拡散防止に関し、国際的には孤立しているのみでなく、保守系国会議員などに核武装論者が増えつつあるのは憂えるべき事態である。エネルギーとして原子力発電(原発と略称)が必要なことは第3章で述べるが、核兵器原料となるプルトニウムを副産物として生成しない次世代原発の開発に成功すれば、核兵器を廃絶することも可能であろう。それが民事専用のトリウム熔融塩炉技術であり、第4章以下で紹介したい。419