ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

まず第2章で「核拡散の実態」を概説した上で、有効な「核拡散防止策」は今世紀の環境・エネルギー・貧困対策を兼ねなければならないことを明らかにし、次に「トリウム利用構想」の具体的内容とその「核拡散防止効果」を提示しよう。2.核拡散を巡る国際情勢と日本の政策【核拡散を巡る国際情勢】1953年アイゼンハワー米大統領が国連で「アトムズ・フォ・ピース」演説を行い、原子力の平和利用が始まった。しかしソ連は1949年に核実験を行い米国との激烈な核兵器保有競争を始め、次いで英・仏・中国が後に続いた。追随する国を恐れて、国際原子力機関(IAEA)が作られ1971年に核不拡散条約(NPT)を発効させたが、核兵器の保有国と非保有国に差別と不公平が基本的に生じている。「非核兵器国は核兵器による防衛を放棄するのだから、核兵器国は核攻撃をしないと約束せよ」と「安全の保証」を約束させても、理性が働いている時にだけ有効である。また、核兵器国から核兵器廃絶への「明確な約束」を引き出しても、合意文書すら作成に至らなかったことが国際的な規制の形骸化を証明している。従って、核技術力の面での確かな決め手が求められる。イラン・イスラエル・北朝鮮にNPT/IAEA管理体制が機能しない実態からみて、核兵器願望国に有効に機能する保証はない。イラクの二の舞を生む火種であるかもしれない。更に核兵器製造には核実験が必要であるので、包括的核実験禁止条約(CTBT)が1996年に設けられたが、米・中国などが未批准で発効できない状況にある。IAEAの報告では、6万発あった核弾頭が、冷戦が終わった今でも8~9ヵ国で2.7万発もあるといわれる。核兵器国は核軍縮の義務を怠っているにも拘らず、それ以外の国々は核エネルギーの平和利用で多くの制約を受けているのが実状である。当面する具体的な核危機は、頻繁な核物質等の不正取引が横行している北東アジア・中東・南アジアの諸国であろうが、テロ集団の出現も含め、各国の核管理に困難が増している。2005年12月、IAEAとエルバラダイIAEA事務局長に「核エネルギーの軍事利用防418