ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

核拡散防止への実効ある提言第22回最優秀賞古川和男1.はじめに核分裂技術は20世紀最大の科学成果の一つであり21世紀の地球を護るのに必須であるが、不幸にも軍事利用が先行し、その平和利用展開にまで影響を及ぼしている。その結果として国際政治に「核拡散防止」策の手詰まり、世界動乱の恐れがもたらされているのである。国際法「核不拡散条約(NPT)」などによる安全保障措置の努力は、当面の世界平和確保のために揺るがせにできないのは明白であるが、2005年5月一杯を費やした国連の「核不拡散条約再検討会議」は成果なしに終わった。長期的な展望に事欠く事態であり、楽観論は全く聞かれない。今こそ、初心に戻って核分裂科学の本質を再検討し、軍事悪用を封じるのに適した「核分裂エネルギー平和利用技術」を本格的に開発すべきである。すでに人類はその道を大戦中から営々と模索研究し、1970年初頭に到達したのが、現在実用化されているウラン系固体核燃料とは全く異質のトリウム系液体(熔融塩)核燃料を利用する原子力発電炉(原発)技術である。より優れた原発燃料でありしかもプルトニウムを生み出さない上に焼却できるので核拡散防止に適するが、それだけ軍事向きでないために冷戦下では敬遠されてしまった。我々はそれを改良単純化し「核拡散防止性」を高めたのみでなく安全性・経済性や核廃棄物対処策を大きく改善した。さらに現原発体系から問題の多いプルトニウムを受け入れ燃焼消滅させつつ、トリウム熔融塩炉への円滑な移行と早期の世界展開を果たさせうる。この「核拡散防止」に優れた新核技術は、また地球環境・エネルギー・貧困問題打開に広く貢献できる。貧困問題打開も、核拡散・核テロ防止に有効な重要案件である。417