ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
403/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている403ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回優秀賞定において「紛争当事国は、投票を棄権しなければならない」とされ(第27条第3項)、当事者を表決参加から排除しているが、当事国と利害関係をもつ加盟国はこの限りでない。スエズ戦争(1956年~)・コンゴ動乱(1960年~)では、紛争当事国に大国の利害がもちこまれ、代理戦争に発展する事態を未然に防ぐため、両国に派遣された国連軍はP5以外の加盟国で構成された。しかし、P5は、当該問題に関する意思決定からは排除されていない。スエズ戦争では、エジプトに侵攻したイスラエルの即時撤退を求める安保理決議に対し、直接的に利害関係をもつ英仏両国が拒否権を行使し、また、コンゴ動乱では、国内勢力の対立が安保理における米ソ対立に飛び火し、ソ連の反発は拒否権行使に留まらず、国連体制、さらには事務総長への免職要求へとエスカレートする事態に発展した。bについては、意思決定プロセスに参加する主体の数が重要である。参加者数が少数の場合、多種多様な意見の可能性が失われ、意思決定が特定方向に傾斜する危険性が高まる。そうなれば、国際機構としての意思決定の正当性に疑義が生じかねない。こうしたバイアスを中和するためにも、相当数の加盟国が意思決定に参加する必要があるが、既にみた通り、実質的な意思決定権を握るのは、全191ヶ国のうちわずか5ヶ国であり、しかも、大国中心、欧米中心である。非常任理事国については、憲章において「衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って」選挙されることが定められるが、P5は名称permanentが示す通り、現行憲章下においては永久的地位であり、「衡平な地理的分配」に考慮を払う余地はない。このように、「国際平和・安全の維持」に関する重責を担う安保理において、5ヶ国中心の意思決定メカニズムは、a・b双方の観点から、質・数の両側面において中立的とはいい難い。P5が非選で構成メンバーが固定化されている以上、現行の意思決定メカニズムにおいては、非中立的要素が構造的に内包されているといえる。2意思決定現場の人的環境の観点から前述の通り、国連の意思決定主体は各加盟国、つまり主権国家である。ただ、国家という単独の主体が意思決定を行うわけではない。意思決定プロセスに参加する複数の人間そ401