ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回最優秀賞なお一層強かった。選挙前における一般的な見方はプノンペン政権の人民党が第一党になるだろうという見通しであったが、明石氏は、世論調査を行うと見通しが現実のものになるという力学が働き、プノンペン政権に有利となるのではないかと危惧した。そこで世論調査を禁止した。この点世論調査の全面禁止は、UNTACが掲げる自由で公正な選挙の実施に貢献したといえるし、野党に対しても選挙の中立性を訴える効果を有した。また、UNTACは独自のラジオ放送局を設置し、民衆に投票の秘密や自由を盛んに訴えるキャンペーンを張っていた。民衆に対しての広報・教育活動は第二章で詳しく見るが、選挙の公平性を疑う野党にとっては、民衆が自由に投票するということは歓迎すべきことであった。こうしてUNTACが懸命に自由で公正な選挙を行おうとする姿勢と、明石氏本人による野党党首への会談・説得の積み重ねなどによってそのシグナルを発しつづけたことで、UNTACはかろうじて野党を選挙に踏みとどまらせることができたのだ。選挙後の対応UNTACは、選挙後の対応においても、プノンペン政権寄りで中立ではなかったのではないかと批判される。選挙結果を受けてどう新しい政権を作っていくかという過程でも、UNTACの中立性の揺らぎを顕著に観察することができる。1まず選挙結果を見てみよう38。議席得票率フンシンペック党(ラナリット派)5845.2%カンボジア人民党(プノンペン政権)5138.6%仏教自由民主党(ソン・サン派)103.7%クメール自由モリナカ党1―この結果からわかるように、大方の予想に反してラナリット率いるフンシンペックが第1党に踊り出た。この結果に対して、投票前に200万ないし300万人の新党員を獲得したと発表し、第1党を確信していた人民党は非常に動揺した。そしてこの選挙結果を到底38明石、前掲書p.106359