ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回佳作独立抗争などのように不安定な問題を国内に抱えているところやカナダのケベック州の独立要求のように種族のアイデンティティを主張する排他的なものもある。大国で文化的生活を享受しているアメリカ人や、国家建設に励む中国人は国家国民としての認識を持って新しいアイデンティティを形成しつつあり、自分の出自をさかのぼって固定的に民族を名乗ることは少なく、混淆進化して、新しい国家民族へと変質しつつあるように思われる。共産主義社会の中で、ソ連人とかユーゴ・スラヴィア人として普遍的な超民族的概念をつくり、生活が安定している状況の中では民族間結婚も進み、同化も進んで国民国家の中で新しい民族の概念が出来上がりつつあった。経済情況の悪化と東欧社会主義連邦体制解体の流れの中で、ソ連は解体して民族国家が分離独立した。ユーゴは民族自決の高まりの中で複数の独立国家に分離した。しかし、民族自決によって独立を勝ち得た独立国家は内部に抱える民族の分離は認めようとはしない。反面、民族自決を崇高な理念として認めてゆくと、世界は限りなく細分化されて小国の乱立となる。世界を安全と平和の視点で考えるならば協調協力の観点から、国家経営可能なレベルの国際的責任能力を具備する国家であることが望ましい。異なるアイデンティティを持つ民族が混在する地域では、生活者が生活空間を共有する地域への帰属意識を認識して共存する生活者の現実をアイデンティティとしなければ、出自による民族の峻別が生じて弱者が排除されることになる。大事なことは民族というアイデンティティではなくて、共存する生活者であるということを認識して可能な限り民族は統合して、国民国家をつくることである。七、人を殺さない戦争へ国際紛争解決の手段として認められている戦争を無くする方法を見出さなければ、人殺しを正義として許される人類に進歩はない。人間が歴史に現れてから今日まで戦いの歴史であり、文明の進化と共に殺戮は残虐を極めている。8世紀に始まるバイキングの海洋で335