ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回佳作者は大国の支援を受けて部族間抗争に明けくれて、大衆運動にまで至らなかったことが今日の民族の悲劇を招く一因になっている。民族のリーダーとして理念のない部族指導者やクルド人の存在を否定するトルコ政府の対応がクルド民族とクルド人難民の将来を暗いものにしている。四、指導者の個性と民族の悲劇2003年3月20日、米英軍がイラク爆撃を開始した。4月9日バグダッドを制圧してフセイン政権は崩壊して国連とアメリカグループによるイラク復興支援事業が始まろうとする矢先に、バグダッドの国連事務所が攻撃を受けて国連は戦後復興支援事業から手を引いて引き上げた。アメリカ軍は12月14日にフセインの身柄を拘束して、アメリカの筋書き通りに事態は進展しているかのように見えるが、反米勢力によるテロ攻撃は激しさを増している。戦争の発端は大量破壊兵器の廃棄要求に対するアメリカの不信感であったが、ブッシュ大統領には9・11テロで盛り上がったアメリカのナショナリズムと、湾岸戦争後、フセインが行ってきた数々の父ブッシュに対する意趣返しが憎しみとなって、短絡的な軍事力行使へと走らせた。国連安保理常任理事国の同意を得ることができず、戦後の政治体制を描ききれないままに開戦して、フセイン政権崩壊を果たしたアメリカ主導の暫定占領当局(CPA)による統治はイラク人の民族感情を刺激して、異教徒の銃口の支配は耐え難い屈辱となって反対勢力の存在を許す結果になっている。アメリカ軍はテロ対策と治安維持のために軍事行動を強化しているが、市民への被害は拡大し、メディアはリアルタイムで情報を世界に発信している。日本の小泉首相も公明党の共演を得て、今イラクに行かねばテロに屈することになる。国際貢献の旗の下に恐れず使命を果たそうと言って自衛隊の派遣を決めた。イラクの戦後復興事業には、過去の大国による石油資源をめぐる利権争いによる民族間331