ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

ないとする規範が国際社会の市民、政府当局者に浸透するように国連は努めるべきだ。そういった規範はないわけではないが、まだ不十分である。事務総長報告はその規範生成に一役かうであろう。また、すでに多くのNGOがパレスチナにおける人権侵害に立ち向かっている。これらのNGOはそのような国際社会の規範の生成に関して大きな役割を担うだろう。その後、国連はそのソフト・パワーを活かし、まず、アメリカ以外の国なり地域機構、例えば、EU、ロシアを取り込み国家によるその規範の受容を進展させ、その後アメリカに圧力をかけ規範の受容を完成させ、紛争当事者であるイスラエル、パレスチナの話し合いの場を作っていくべきだろう。EUが多大な支援をUNRWAにしている事実を考えれば、EUはパレスチナ問題に大きな関心を有しているはずだ。また、アメリカは、分離壁の建設を批判し、イスラエルへの援助額を減らしところをみると、国際社会への規範に対し一定の気遣いをすることが国益になると思っているようである。規範化、規範の受容が今後さらに進めば、アメリカがその規範を守ることが国益にかなうと思えるようになるかもしれない。中東和平ロード・マップは国連、EU、ロシア、アメリカの4者によって策定された。しかし、その後イスラエルが建設する分離壁や、パレスチナの自爆テロなどにより和平が進展していない事態に対し、4者は統一した対応をしていない。この事態に対して、国連、EU、ロシア、アメリカは一致した行動をとらなければならない。そうでなければ、パレスチナ問題はいつまでたっても進展しないであろう。国連に課せられるべき役割は、パレスチナ人への社会的、経済的援助にとどまらず、パレスチナ問題の政治的解決にも大きく貢献することである。そして、国連はそのような役割を果たせる能力を有している。326