ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回優秀賞範の生成とは1のプロセスである。そして、安保理の決議は2のプロセスであるといえるだろう。2のプロセスが機能不全に陥っても、1のプロセスが残されているわけである。山本吉宣教授は「安全保障上のレジーム/グローバル・ガヴァナンスの変容は、『構成的な規範』が変容していることに由来することが大きいxxx」と言う。一方で、「権利や利益の裏づけの稀薄な規範がそう簡単に定着するとは考えにくいxxxi」。そのため、規範を定着させるためにも、大国がその規範を守ることが国益にかなうと思えるようにしなければならない。6.結論国連はパレスチナ問題発生当初より、これに取り組んでいる。現在でも国連は、UNRWAを通じてパレスチナ人を経済的、社会的に支援しているが、問題の政治的解決の話になると、国連のプレゼンスは低く、アメリカが主導的役割を担っている。その理由には、4節でも述べたとおり、紛争当事者の期待、信頼の欠如、構造的問題が挙げられる。国連はこのまま人道支援と経済中心の普通の国際機関化の道をたどるべきではない。それは、パレスチナ問題にとって、さらに言うなら世界にとっておおきな損失となるからだ。5節で述べたように、国連はソフト・パワーを有する。そのパワーは国連の幅広い分野で積み上げてきた実績とその人権の擁護、尊重といったイデオロギーによるものであった。国連の人権の擁護、尊重といったイデオロギーは「現代のカトリック」、そして、国連官僚機構は「正しい協会」となりうるのである。冷戦が終わっても安保理が機能しないこともある。それはパレスチナ問題に顕著である。2003年10月15日、アメリカが拒否権を発動させ、分離壁の建設中止を求めるシリアらの安保理決議案を否決にした事件は、そのことをよく表している。国連はこのような事態に各国になにかを強制しようとするのではなく、そのソフト・パワーを使って国際社会の規範の生成に取り組むべきである。上に述べた分離壁について考えると、人権を無視している壁の建設や、今回の安保理で見られたようにイスラエルを擁護する態度などを適切でxxx同脚注xxiii 234頁xxxi同脚注xxviii 173頁325