ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

も純粋に力卜リックの教義に基づくものとは限らない点、また、十字軍派遣のようにその判断がよい効果だけをもたらさない点で教会は安保理に似ているのかもしれない。では、安保理が「現代のローマ教会」とするならば、「現代世界におけるカトリック」とはなにか。私は、難民支援活動、開発分野に代表される国連の全体の活動に表現される人権の擁護、尊重といったイデオロギーが「現代世界のカトリック」になりうると考える。そして、「現代のローマ教会」である安保理は必ずしもそのイデオロギー(教義)を体現しない。そして、中世ヨーロッパでもそうであったように、求められるのは教義に基づいて行動する「正しい教会」である。国連のイデオロギーを「現代世界のカトリック」にならしめるものは国連のソフト・パワーと考える。つまり、国連全体の活動によって培われたソフト・パワーが、国連全体の活動によって表現されたそのイデオロギーに国際社会の信頼を集め、国際社会を動かしうる。そして、その逆もある。すなわち、国連のイデオロギーが国連のソフト・パワーを生み出すということである。ならば、このソフト・パワーを生み出す国連の活動を動かし、また、そのイデオロギーを表明する国連官僚機構全体が「正しい教会」になると言えば言いすぎであろうか。(3)国連によるソフト・パワーの使用とはでは、5節の(1)で国連は「ソフト・パワーを使うべき」と述べたが、具体的に何をするのか。それは、国連がそのソフト・パワーを使うことによって、国際社会の「規範」を生成し、国際社会にその規範を体現していくことに他ならない。ここで言う「規範」とは「共通のアイデンティティーを持つ主体の問で適切とされる行動の基準xxviii」である。「グローバルな適用可能性をもつ規範が制度化される過程をより詳しく見るならば、そこには1規範の生成→国家による受容→国際社会における内面化というサイクルと、2規範が具体的な法的性格をもち、実際の国際機構の設立、強化に結び付くプロセス(規範の法律化)という、2つの動きを見出すことができるであろうxxix」。国連のソフト・パワーによる規324xxviii星野俊也「国際機構-ガヴァナンスのエージェント」同脚注xxiii 172頁xxix同脚注xxviii 176頁