ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

体だけでなく全加盟国のコンセンサスを代表するものでなければならない。とくに国連による軍事力の使用は、安全保障常任理事国による、発展途上国ないし中小国に対する危機管理の手段となる可能性が懸念されていて16、こうした懸念を払拭するためにも安全保障理事会の民主性には特別な配慮が必要と考える。3国連にもとめるもの国連は「国家」単位で構成されているが、国際社会の問題は「国家」単位で発生するとはかぎらない。それが民族問題である。現代のようにグローバル化された世界では、特定地域の問題は地球規模の問題に発展する危険性を秘めている。その点こそが、国連が民族の問題にも関わらざるをえない理由である。ごく局所的な民族問題が、宗教がからむと世界規模の紛争を生み出す危険性を有し、この意味で特定民族の興亡は、人類全体の興亡とリンクしているといえる。では国連はどうかかわるべきなのか。この点について国連は、『予防外交』を中心とした「平和創造」、安全保障理事会が中心となる「平和維持」を平和への課題作業と位置付けている17。以下に、紛争の予防、紛争の解決、紛争後の処理について私見を述べる。a紛争の予防民族紛争には、自決権に訴え、分離独立を求めるものが多いが、この論理は国際社会において説得性はあるのだが、なかには政治指導者が支持基盤を固めるためにこの論理を利用していることがある。利用された論理に基づいて、必要以上の民族主義があおられ、紛争の火種となっている場合、紛争を予防する方法としては、この政治指導者が武器を手にすることを防ぐことである。周辺諸国から武器だけでなく、経済的支援を受けられないようにすることである。なぜなら、民族問題はかならず紛争の要因になるとはかぎらず、ある指導者と結びつくなどの、さらなる要因があって紛争に至るからである。このさらなる要因をできるだけ取り除くことが、紛争発生の防止に役立つと思われる。28616松井芳郎、pp.236-239.17国際連合広報局、前掲、pp.76-81.