ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回最優秀賞果、それらに伴う問題も国境を越えてグローバル化し、一国では対応できなくなり、国連などの国際的機構や制度による対応が不可欠になってきたということである14。さらに国連のもつ国際社会での理念としての価値から、国連が無用でないことがいえる。国連を無用と考える論理には、一国単独で生きていけるという考えか、一部の他の諸国との関係だけでやっていけるという考えがある。すぐにアメリカを思い浮かべることができるが、そのアメリカですら、逆に国連を利用する場面があった。1990年の湾岸戦争では武力行使に国連からお墨付きをもらい、それ以外の武力行使についても、つねに国連の安保理による決議を得ようとする建て前をとってきた。これは、大儀を与えることができるのは、国連しかないことを物語っている。d国連の中立性国連が無用であると批判があったとしても、前述したように、現実に国際社会に欠かせない存在であることは確かである。国際社会が国連を信頼する理由のひとつは、中立性ではないだろうか。国連がどの加盟国に対しても平等であることが、紛争を解決する国連の作業にどの加盟国も信頼を寄せることができる前提である。ではどのようにして国連は中立を保てるのか。国連の中立性を揺るがすもの国連は、第二次世界大戦の戦勝国による戦後秩序維持メカニズムとして考案された理想主義に根差す政治システムである15。本来が戦勝国である大国の発想で興されたシステムであるうえ、そこでは安全保障常任理事国に特別に「拒否権」という権限を与えており、法的にも「大国」たることを保証している。安全保障理事会での決定に加盟国は従わなければならないが、このシステムを民主的といえるかが疑問である。もし国連に民主化が徹底していないと、その決定は一部の大国にとって有利なものと懸念され、決議がなされても全加盟国が受け入れることができるような国際的な決議と捉えられず、その結果として国連はどの国にたいしても中立であるとはいえなくなる。この手続きのまま国連が民主的であるといえるためには、安保理事会の決定は理事会全14横田洋三:国連はどうなるか、国際問題、523:2-9、日本国際問題研究所、2003.15 神奈隆博:欧州のジレンマと国連の将来、国際問題、523:25-42、日本国際問題研究所、2003.285