ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

信頼が一気に揺らいだ。このように、今まで国連に不信感を抱いたり国連を軽視する政策をとった加盟国は、アメリカやイギリスだけではない。冷戦時代のソ連およびその同盟国は、多数を制する西側陣営に支配された国連に対して、大いに不満であった。これらの社会主義国は、1960年代には国連の平和維持活動(PKO)に対する分担金の支払いを拒否し、国連を危機に落とし入れた。また、国連の枠組みのもとで植民地からの独立を勝ち得た多くの途上国も、最近は、国内の民主化や人権などに関して介入してくる国連およびその補助機関や専門機関に対して、不満や苦情を隠さなくなった。欧州諸国は、国連における影響力が相対的に低下したこともあり、外交政策ではむしろ欧州連合(EU)の推進に力を入れる傾向にあり、安全保障についても、国連よりは北大西洋条約機構(NATO)や全欧安全保障協力機構(OSCE)に依存する傾向が強くなりつつある。このようにいずれの国連加盟国も、国連に対して何らかの不満や不信を抱いているというのが現状のようである。では国連は無用なのか。以下の理由で国連が無用でないことを述べる。まず国連の現実の活動から無用でないことがいえる。無用でなかった例として、多くの紛争地域にいまなお多くの国連のPKOが展開している。東ティモール、シェラレオネ、コンゴ民主共和国、グルジア、レバノンなど13のPKOが派遣されている。さらに国連ファミリーに属する16の国連の専門機関(ユネスコ、ILO、世界銀行、WHO、など)やIAEA、WTO、などの国連関係機関を含めると、国連は、経済、開発、環境、人権、教育、科学、文化、技術、交通、通信など、幅広い分野において活動している。国連は、今日、国際社会にとって欠かせない存在になっている。また、国連を必要とする理由として、「グローバリゼーション」がある。つまり、科学技術の進歩を背景に、人、もの、金、情報が国境を越えて自由に移動するようになった結284