ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
282/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている282ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

何らかの形で中止を求めたり、そのために制裁しようとする場合があるが、やはり同じ論理で国連あるいは国際社会の要求を紛争当事民族が無視することがある。その論理の背景にはアメリカへの敵意があったり、ヨーロッパへの反発があったり、一様ではないが、いえることは、紛争当事民族は一方では援助をもとめて国際社会あるいは国連に依存しようとし、他方ではあえて無視しようとする行動をとるということである。また、紛争の多くは繰り返される。一時的には政治的に安定したかにみえる民族でも、貧困が続けば現状を打開しようと政権争奪が再燃し、またナショナリズムがかきたてられれば隣人の異民族を敵に扱おうとするからである。親を異民族に殺された子供は、その復讐心がくすぶり続けるだけでなく、孤児ゆえに経済的に恵まれず、学校に行って正しい情報を得るという機会もなく、生活のため兵士になり、それでも貧しいために現状に不満を持ち、わかりやすいナショナリズムの思想に吸い寄せられ、政権奪取の行動に加わっていく、というようにリンクから脱出できないのである。したがって一度は安定した政情も、貧困が続けば、新たなナショナリズムが生まれ、この思想によって人々はふたたび隣人の異民族を敵対視し始めることになる。悲観的ではあるが、紛争を根絶することは恐らく不可能である。紛争を根絶しようとすることより和平を維持することが、世界秩序を維持することにつながると考えられる。そうなるとあらゆる地域に常に目を配っていなければならない。前述したように、被支配側にある民族は、国際社会での発言が困難である。こうした民族の声を拾うことが、国連には求められているのではないか。2国連の役割a機構としての国連国連憲章でいう「国家」とは、国際法上の法的主体としての地位を承認された、主権的・領域的「国民国家」の意味である。現在の加盟国は191カ国で、成立時の原加盟国は51カ国であったから、設立の1945年から半世紀の間に、加盟国数は、3.7倍になったことに280