ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

い。しかも、現実には必ずしも平和的・合法的なものばかりではない。例えば身近なところで、北朝鮮からの国外脱出者(脱北者)に対する民間支援グループの問題がある。国外脱出そのものは勿論、それを支援する行為も北朝鮮及び中国国内において違法であり犯罪であることは衆知の通りだが、韓国やアメリカ・日本等で公然と活動し、その一部に『全米民主主義基金』なるNGOを通じてアメリカ議会からの資金が流れ込んでいるとの指摘もされている。中国・藩陽の日本総領事館への駆け込み事件で証明されたことは、NGOの行動によって深刻な外交問題さらに国際紛争を惹起させることも十分に可能だということである。あの生々しいテレビ映像が、誰によって、またどのような目的で撮影され提供されたかは敢えて言うまでもないだろう。アメリカが「テロリストへの大量破壊兵器流出の懸念」をイラク攻撃の最大の理由に挙げているのも、単なる口実や被害妄想として捉えてはいけない。かってのアメリカにとってそうであったように、アルカイダのような「非政府軍」(non-governmental army)は国家にとって極めて利用価値が高いのである。旧ソ連のアフガン侵攻の際、彼等に武器や資金を供給し支援したのは他ならぬアメリカであった。アメリカが口酸っぱく「国家支援テロ」(state-sponsored terrorism)の脅威を訴えるのも、元利用者としての率直な感想もしくは反省と考えれば少しは納得も出来よう。私が批判を覚悟でアルカイダとNGO・NPOを同じ角度から論じようとするのは、一つ間違えれば後者が前者と同じ道を歩みかねないからである。国家利益の追求の為に利用される場合もあれば、その逆に、国家利益に反して国家を脅かす場合も考えられる。現に殆ど実現しかけていたアフガニスタンのイスラム原理主義革命は、アルカイダの暴走によって夢と潰え去った。「非政府」・「非営利」というのは国家・政府にとって双刃の剣であることを、私達は正しく認識すべきなのである。262