ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

が行われたのは紛れもない事実である。そして「過ち」は繰り返され続けてきた。国民国家がそうであったように、新しい時代の新しい権威や権力は必ず新しい戦争や紛争の主役となっていった。私達が四千年の歴史から学びえた唯一の教訓は、「あらゆる時代は最終的に暗黒時代・暗黒社会として終る」ということである。とすれば、導かれる結論は一つしかないではないか。21世紀が本当に『地球市民社会の時代』・『人権の時代』であるとすれば、21世紀においては地球市民が戦争や紛争を惹起する、少なくとも地球市民の名において、あるいは地球市民の支持の下で戦争や紛争が遂行されるとしか考えられないのである。――何を馬鹿なと思われるだろう。そんなことは絶対にありえないと思われるだろう。世界規模の平和を実現する為、国家・政府という制約を乗り越え立ち上がった(地球)市民が、よもや自ら戦争や紛争の火種になることなど考えられるはずはないと言うであろう。その通りである。考えられなくて当然である。今までも考えられなかったのである。だからこそ今まで同じ過ちが何度も何度も繰り返されてきたのである。かのヘーゲルでさえ『真理は後ろ姿でしか確認出来ない』と嘆じた。『三度目の正直』はあっても「四度目の正直」はない。同じ経験則が三回も続けばそれで十分である。後は素直に、謙虚に、過去の歴史から学ぶ姿勢があるかないかだけが問われるのである。2新しい戦争『国家の時代』において国際紛争は国家(群)と国家(群)との間の利益(国益)の衝突であり、その国際紛争を解決する為の最終手段が戦争であった。逆に言えば、国家以外に国際紛争の当事者はなく、また国益の衝突なくして起こる戦争もなかった。争うことで国家が何かを得、あるいは何かを護ろうとしたからこそ近代国家は紛争し戦争したのである。254