ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回奨励賞21世紀の国際紛争-国際連合は『新しい戦争』を防止することが出来るか?佐藤寿一1『国家の時代』の終焉今日、国際連合は一つの大きな岐路に立たされている。それは、国際連合自身が『国家の時代』あるいは『国家主権の時代』の終焉を認めるか否か最終的な決断を迫られていることである。2000年9月に開催された国連ミレニアム(千年紀)サミットの報告書の中で、アナン事務総長は「国家主権が人道に対する罪の盾に使われてはならない」ことを明言した。これは単に人道的介入の是非に言及したに止まらず、国際社会の現状が、国家主権の不可侵性という近代国際法及び国際関係の基本原理を変容させつつあることを(事実上)追認したと解すべきである。21世紀を『地球市民社会の世紀』へ、また『人権の世紀』へという声は日に日に高まっている。20世紀は『国民国家の世紀』・『国家主権の世紀』、そして結果的に『戦争と革命の世紀』として記憶され断罪されようとしている。紛争・難民・自然災害・環境破壊・人権侵害・麻薬・飢餓・貧困・感染症・……etc.人問の生命や安全を脅かすさまざまな地球規模の課題の根本的な解決に対して国家主権の絶対性・不可侵性は却って障害になるとの認識は急速に拡がり、国家レベルを超えた新たな世界秩序=グローバル・ガバナンスの必要性が説かれ始めて久しい。人類が希求すべきは「国家の安全保障」(national security)ではなく「人間の安全保障」(humansecurity)であるという主張、またその為に「人間開発」(human development)こそ急務であるという主張は、21世紀へ向けた国際連合の新たな行動指針として着実に普遍化251