ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

ないことを知った。…今日では、私達は相互に依存している14」と述べている。アナン事務総長が「市民社会」の中でも重要視するのはNGOであり、「国際舞台で大きな勢力となっている市民社会は、その重要性をさらに増している。近年、国連は経済・社会開発、人道問題、公共衛星、人権推進など分野を問わず、特に国別レベルにおいて、その活動の多くに非政府組織及び非政府団体が密接に関わり、多大な貢献を行っていることを承知している15」と述べている。今日まで、国連は社会経済理事会におけるNGOの協議制度に代表されるように、NGOと双方向の連絡関係を持ち、そして互いに国際社会のための利益を生んできた。例えば1997年12月に採択された対人地雷禁止条約が、ICBLという1000以上のNGOを傘下におくロビー活動によって成立したことはよく知られているであろう16。条約採択のきっかけ、そして条約の中身にわたって、同団体は主権国家が果たし得なかった役割りを担ったのであった。その他にも、表だって取り上げられることはないが、国連事務局内にある広報局とNGOが毎年開催している年次会議も、グローバライゼーションという情報化社会の中にあって一定の役割りを果たしてきているのである。アナン事務総長は「世界的な市民社会がこれまでになく活発化していることがますます明らかになっているにもかかわらず、国連には現在のところ、市民社会を取り込んでその活動の真のパートナーとする能力が十分に備わっていない17」と述べていたが、近年においては、多国籍企業との間にグローバル・コンパクトという協働関係を構築並びに発展させている。また、市民社会のうちでもっとも国際社会の秩序形成に深い関係と大きな影響力を有しているNGOとの関係においても、国連と市民社会の連携関係はかなりの実績を挙げてきたと言えるし、今後の可能性についても期待できるものといえよう。しかし、ここで国連大学はどうかといえば、市民社会との実質的な協力関係は希薄なものであるように思われる。国連大学憲章に見られるように、同大学はそもそも国連のシンクタンク的存在として設置されたこと、そして世界各国の学者・研究者の国際的共同体である。しかし、現在の国際社会において市民社会の力が大きくなってきていること、そし24614 1998年1月31日、ダボス(スイス)、世界経済フォーラムに対する演説。15 1997年7月14日、『国連の再生:改革に向けたプログラム』(A/51/950)。16松井芳郎著『国際法から世界を見る―市民のための国際法入門―』(2001年、東信堂)279-280頁。17 1997年7月14日、『国連の再生:改革に向けたプログラム』(A/51/950)。