ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回優秀賞本部に活動を開始した。国連大学には、1国際的学術共同体、2国連と世界の学術社会の「かけ橋」、3国連機構全体のシンクタンク、4途上国における能力育成支援、の基本的機能があるが、国連大学本部の活動としては「環境と持続可能な開発」と「平和とガバナンス」の2領域に分かれている。前者は、人間の活動と自然環境との相互作用に焦点を絞り、とくに途上国が直面する課題を重視し、後者のプログラムは、研究と能力育成を通じて、平和とグッドガバナンス(正しい統治)の促進に寄与することを目指している。大学本部は、能力育成事業と研修プログラムの業務全般の調整も行い、後者は、基本的に途上国の若手研究者に対する研修助成金の提供が中心となる。以上のような国連大学の活動は、シンクタンクとしての役割りはある程度果たせていると評価できよう。しかし、実際の紛争に関わる実務的な機関として機能しているかどうかは疑わしい。例えば、国際紛争の解決に国連大学の研究成果が活用されたという話しは聞こえてこないのである。したがって、これからの国連大学の活動というのも、机上の研究に止まらず、現場主義的な積極的研究姿勢が求められるであろう。国際紛争に関する活動であれば、例えば、かかる紛争地域に「国連大学調査団」を派遣して紛争の事実に関する調査を実施したり12、「国連大学ミッション」をPKOなどとともに派遣し、紛争処理の中心的ブレーンとして機能させたりすることを提案しておきたい13。国連大学は、国連活動のブレーンとしての役割りを有すると共に、能力育成事業などを通じた活動も行っている。しかし、国連関係者あるいは国連研究者が国連大学の存在を知っているとしても、それ以外の世界の人々は国連大学を知っているだろうか?また、国連の活動に携わっている人でさえ、国連大学の正確な姿を知る人は少ないように思われる。こ12もっとも、憲章上は安全保障理事会による事実調査団が派遣されることもある。憲章第34条は「安全保障理事会は、いかなる紛争についても、国際的摩擦に導き又は紛争を発生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。」と規定する。13 INCOREにおいても、平和維持活動に関するプログラムが存在する。それは、「平和維持活動における軍事要員および文民要員の訓練と準備(Training and Preparation of Military and Civilian Peacekeepers)」である。この研究は、INCORE設立以前の実行可能性のある研究として立ち上げられ、国際機関が民族紛争の影響を取り扱う際の能力を妨げている多くの問題に着目したものであった。これらの問題のひとつは、平和維持活動にかかわる要員に提供される訓練の流動性(variability)であるとされた。これに反応して、INCOREは、ライムラック大学(the Universityof Limerick)と「平和及び紛争解決のためのオーストラリアセンター(the Austrian Center for Peace and ConflictResolution)」と共に、平和維持活動における軍事要員および文民要員の訓練と準備にかかわる大規模な調査計画を実行した。これは国連大学による資金援助がなされた。1996年に公刊された報告書の勧告は、平和維持要員彼ら自身の経験に基礎を置くものであり、文民要員に関しては、訓練計画の標準化を要請している。報告書はまた、軍事要員に対して紛争に対処する技術の必要性、そしてより上級レベルにおいては他国において平和維持活動の訓練計画に参加することを喚起している。243