ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

関」に窮したままに終わるのではないだろうか。現実に発生した国際紛争を社会科学として研究し、それを実際の解決に役立ててこそ、国連大学あるいはINCOREをはじめとするプロジェクトの存在意義があるように思われる。現実の国際紛争の解決への研究成果のフィードバックが重要であるといえよう。2新たな国連大学へ向けて―シンクタンクから実務機関へ国連大学の目的と使命を定めた国連大学憲章が採択されたのは、1973年12月6日の第28回国連総会においてであった(国連総会決議3081[XXVIII])。同憲章には、国連大学の研究活動の基本姿勢が記されている。第1条2項によれば、同大学の目的は、「国連大学は、国際連合および専門機関が関心を寄せる、人類の存続、発展および福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題の研究をその仕事とする」ものとされている。国連大学は、大学という名を持つが、通常の大学とは異なり、国連憲章の目的と原則を追及・促進するための研究と大学院レベルの研修、そしてその成果の普及に携わる、学者、研究者らの国際的共同体として機能しているのである。憲章採択によって正式に設立が決定した国連大学は、「研究、大学院レベルの研修および知識の普及に携わる、学者・研究者の国際共同体」(国連大学憲章第1条1)でありその機能は「企画および調整のための中枢機構ならびに先進国および開発途上国における研究・研修センターおよび研究研修プログラムのネットワークを通して」(同)果たされることになった。こうした形の国際機関の構想を打ち出したのは、ウ・タント元国連事務総長であった。彼は、1969年に、「真に国際的な性格を有し、国連憲章が定める平和と進歩の諸目的に合致する国際連合の大学」の必要性を訴えた。当初は、国際機関への出資金が増えることを懸念した欧米先進諸国からの反対にあったが、途上国はこうした機関の設立が自国に対して恩恵をもたらすとして賛成した。その後、いくつかの経緯を経て、国連本部とユネスコの共同支援を受ける国連総会傘下の独立機関として国連大学が誕生し、1975年、東京を242