ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回優秀賞はダグ・ハマーショルド(Dag Hammarskjold)第2代事務総長が、危機打開のために国連警察軍設置の必要を説くカナダのピアソン(Lester Pearson)外相と協議を行い、国連緊急軍設置に関する決議案を総会に提出したことに始まる。事務総長たちのこうした動きに対して総会は決議998(ES-1)を採択し、事務総長に対し設置計画を48時間以内に提示するよう要請したのである。これ以降、国連平和維持活動は憲章の予定していなかったものとして実施されるようになった。特に冷戦後の国際社会における平和維持活動の派遣数の多さと任務の多様化8は、この活動の制度的な成功を証明するものであったといえよう。ところで、国連大学は平和維持活動に関するその研究成果として既に3冊の著書を刊行している(本の題名に「平和維持活動」が入っているもの)9。これらはいずれも貴重な研究成果であるが、どの程度実際のPKO政策に反映されているのかが重要な点であるといえよう。d)国際裁判による国際紛争の解決国際裁判による国際紛争の解決も存在する。伝統的には、国際紛争は法律的紛争と政治的紛争に分類されるが、前者が国際裁判に適するものとされ、後者は裁判以外の外交交渉等によって解決されるのが良いとされてきた。国際裁判に関して、国連はその主要機関として国際司法裁判所を設けている。国連加盟国に対して法的拘束力を有する判決を下すほか、勧告的意見を出すことによって法的紛争の解決に貢献することとなっている。もっとも、国際社会の発展とともに紛争解決のシステムは多様化し、機能別に常設の裁判所は設けられている。例えば、国連海洋法条約上の紛争については、国際海洋法裁判所やその他の紛争解決システムによって裁判が行われ、国際経済並びに国際貿易に関わる問題については世界貿易機関(WTO)において紛争の解決が予定されている。以上が現存の国際連合における国際紛争解決システムであるが、以下では具体的に国際8この点に関しては、酒井啓宣「国連憲章第7章に基づく暫定統治機構の展開―UNTAES・UNMIK・UNTAET―」『神戸法学雑誌』第50巻2号(2000年)。9 Peacekeepers, Politicians, and Warlords: The Liberian Peace Process; Stern, Brigitte (Ed), United NationsPeacekeeping Operations: A Guide to French Policies, 1998; L. William Heinrich Jr., Akiho Shibata, and YoshihideSoeya (Ed), United Nations Peacekeeping Operations: A Guide to Japanese Policies, 1999.239