ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回優秀賞国連がより4 4主体的に紛争に関与することとなる。「国際の平和及び安全の維持」に関して第一義的な責任を負うのは安全保障理事会である(第24条)。同理事会は、かかる事態について「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略の存在」を決定し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、1勧告を行うか、もしくは2第41条の下での経済的措置あるいは第42条の下での軍事的措置を決定する(両措置は併用される場合がある)4。国連憲章第7章の範囲についての安全保障理事会の決定は、加盟国に対して法的拘束力を有するため、加盟国は安全保障理事会の決定に従わなければならない。191の加盟国によって構成される総会も、紛争の解決について一定の役割りを果たすことになっている。第10条は、「総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題又は事項について国際連合加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる」とされる。ここで強調されるべきであるのは、総会の一般的権限の源泉といわれるこの条文が、「憲章の範囲内にある問題若しくは事項」というきわめて広い範囲を対象としていることである。この総会の一般的権限は、安全保障理事会との関係においては第12条の下での制約―「国際の平和及び安全の維持」に第一義的責任を負う安保理の優越―が存在するとされるが、実行を通じて第12条1項は限定的に解釈・適用されるようになっているとされる5。また、総会は朝鮮戦争における安全保障理事会での拒否権の行使による機能不全を回避する打開策として「平和のための結集決議」(Uniting for Peace Resolution)を1950年11月3日にソ連圏諸国の強い反対の中で、52対5で成立させた。決議はABCの3つによって構成されているが、重要であるのはAの手続である。Aの手続の下で総会は、「平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為」があると思われる場合に安保理が常任理事国の全員一致が得られないために平和維持に関する第一義的責任の遂行に失敗したときに、国際の平和及び安全を維持しまたは回復するための集団的措置のために加盟国に勧告を行うべく、直ちに当該事項を審議しなければならないが、総会が開会中でないときは、緊急特別会期4 経済的措置に関しては、国連大学が連携関係を有している英国北アイルランドのアルスター大学との「紛争解決・民族問題国際プログラム(INCORE: Initiative on Conflict Resolution and Ethnicity)」内部において、「制裁に関する安全保障理事会決議の国内的履行「包括的アプローチ」」が存在し、主として憲章第7章下で科された制裁に関して国際法と国内法の関係についての研究に主眼がおかれている。17名の専門家により、包括的な研究が行われる予定である。それらには、ECといった地域的側面との関連性や、非加盟国や被制裁国の隣国の問題も含まれる。5 植木俊哉「国連の政治的機関による紛争解決」、国際法学会編『日本と国際法の100年第9巻紛争の解決』(三省堂、2001年)、168-170頁。237