ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回優秀賞国際紛争を避けることは出来ない。第二次大戦の戦勝国が中心に鎮座する国連の体制では、国際紛争を解決することは不可能である。国連大学においては、国際紛争を阻止するためにも国連の形骸化を阻止するためにも、5ヶ国という枠組みを置かずに国連を運営する手法の可能性を求めてもらいたい。常任理事国の拡大あるいは見直し、という以前から言われていたことではなく、どこかの国が中心という形をとらずに国連を運営する手法の実現可能な策を是非提案してもらいたい。というのも、5ヶ国にもそれ以外の国にも、常に永続的に政治、経済的安定を保てるという保障はどこにもない。国連がどこかの国に中枢を置いて運営される時、その中枢が瓦解した場合には最早国連は機能不全である。繰り返すが、5ヶ国の常任理事国中枢型での国際紛争の解決は、本来最も重要な、国家は主権国家であり世界はその集合体である、との大前提を考えれば論外である。更に、前項に述べたように、そうした国家定義の理念的重要性を無視したとしても、国家の非永続性を考慮すれば最早限界なのである。3、追記~国連の「人道主義」への苦言-「援助」制裁の必要性~:食料もお金も、働かずしては手に入らない。これは当たり前のことである。したがって、被援助国における援助慣れ、援助太り、という弊害を国連は断ち切る組織でもあらねばならない。特に、NGO、NPO、国家機関の外郭団体、ボランティア団体等の林立により、どんな国にも援助の手が伸びる昨今である。「人間の命は尊重されるべき」という彼らの論理は理解できるし聞こえもよい。しかし、国家レベルでの制裁が、彼らの援助により意味を持たなくなる現状もまた放置してはおけまい。個人の活動の自由は守られるべきであり、この点は壁(ネック)となろう。しかし、個々人は主権者である以上国家を形成する構成員であり、その国家の集合体として国際社会が存立しているという現在の社会基本を考慮すれば、現在の援助問題は看過できない。国連は、問題の如何を検討する以前に人命尊重のみを謳う傾向にある。ただし、それは229