ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第18回優秀賞参加の為に、国際機関がサロンの若者達を積極的にアルバイトやパートとして登用するような仕組みを作る。5日本でしかできない研究領域を開拓、発展させること昨今激しさを増している宗教に絡んだ紛争を緩和すべく、宗教を学問的な見地から研究するための支援を行うのも国連大学に期待される役割の一つと考えられる。特に日本は、土着の神道と外来の仏教という二つの宗教が個人の中で共存していたりするユニークな国であり、戦後の学者天皇に象徴されるように、学問は武力に代わるものとして重視されてきた国でもある。特に宗教的な対立の渦中にある中東地域とは歴史的な軋轢も少なく、中立的な立場をとりやすい。学問による長期的な平和を目指すためのあらゆる手段を試行する場として、また世界の叡智を結集する場として国連大学が、日本と言う地の利を生かして行く余地は十分にあるはずである。また日本の昭和史は、満州事変前後の農村の貧困、戦時下の飢餓、原爆被爆、高度成長期の公害等と、現在世界の抱えている問題を凝縮したような歴史を背負っている。それは一つの国家の「途上国」から「先進国」への発展のプロセスともいえる。それらの体験を正しく伝えることは、日本が「顔の見える援助」を行う上でとりわけ重要かと思われる。かつて古代ギリシャでソクラテスが、「無知の知」といったようにアカデミスムの基本は自己の無力さを知り謙虚に学ぶことにある。これは、古代中国における孔子が「忠恕のみ」と言った他人を思いやる心、つまり自己の客体化とも矛盾しない。国連大学がアカデミスムに根ざした学術機関と連携を取ることで、現状の様々な困難も長期的に打開するための糸口が得られるのではないのだろうか。5.おわりに国連に参加する日本以外の国は、国連を自分の国の利益にいかに利用しようかと考えるのに対し、日本人は、国連を額縁に入れて飾っておくと言われている。しかしながら、経済の停滞と共に最大の開発援助国である日本が、そのまま何もせずにODAの支援金を減ら127