ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第18回優秀賞市場は魅力的なものに違いない。授業料を値下げすべきだと言う中国政府と採算の点で消極的な欧米の大学間との軋轢も指摘されているが、過去5年間に700%増加したと言う中国の欧米からの学校や大学の誘致には目を見張るものがある。日本の大学が、独自に戦後の人材を育ててきた功績は大きい。しかし、国際協力という見地から考えると、生の英語にふれることのできる中国人学生、中国という急速に経済発展を遂げる国に分校を持つ欧米学生の双方にとって、こうした欧米大学による中国分校の果たす役割は無視できないものがある。日本の国際協力関連機関:JICA及びJETROの抱える問題点人的貢献に焦点を当てた場合の国際協力の実行機関としては、外務省の予算の受け海外援助を行うJICAはもとより、日本と海外とのビジネスの橋渡しとなる経済産業省の外郭団体、日本貿易振興会(JETRO)も広義の国際協力機関に含めることができるだろう。それぞれの省庁の意向を受け、前者は途上国への海外援助を、後者は途上国を含む世界各国との貿易振興を独占してきた事業体ともいえる。したがって、これらの機関は自らが競争にさらされることがなかったために、官庁以上に官僚化が進んだとも言われている。また、これらの機関では、民間の売上に当たる部分を日本政府から支給される為に、サービスの質の向上よりも年間予算の消化に重点が置かれがちである。こうした海外援助や国際貿易を扱う機関の動脈硬化ともいえる組織の背景には、JICAやJETROの専門家が外部からの短期間の調達によって賄われ、これらを管理する業務に当たるスタッフの多くが、海外での人材育成や知的貢献に直接かかわる機会が少ないからとも言える。即ち、現地での公的任務の実行部隊と管理する側との人的流動性のなさが、現場の貴重な生の声を吸い上げ、経験として蓄積、活用することを阻んでいる。それは、現在、外務省を含めJICAやJETROが海外である程度の経験を積んだ青年海外協力隊員や国連のアソシエート・エキスパート、JPO 14を積極的に登用していないことと無縁でないかもしれない。形式的な手続にこだわる官僚制が、教育やプロジェクトの内容の向上を願う熱意溢れる新人達の登用を間接的に妨げているような気がするのは、思い過ごしだろうか。14 JPO: Junior Professional Officer.123