ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

いずれにしても、上記2つの問いに対し支援を受ける側と行う側の双方から最良の結果を引き出すためには、途上国支援を行う日本人の教育は不可欠である。語学や専門知識はもとより、自分の行う支援についてしっかりした目的意識を持ちかつ現地への心配りを怠らず、自分の使命に誇りを持てる人材。こうした優れた人材の量、質両面での向上には、付け刃的な語学や異文化コミュニケーションの学習に留まらない、革新的な人材育成・教育が必要になるだろう。3.日本における人的貢献の現状ODAについては、支出額、その配分の仕方や、特定の国に対する援助の仕方まで、様々な方面から議論がなされている。しかし太平洋戦争の反省から平和国家を標榜し限られた防衛力しか持たず、例えば英国とアメリカにおけるような移民を通しての血の繋がり、或いは東南アジア諸国と中国のような華僑人脈によるネットワーク、といった他国と間に強力な人的繋がりを持たない日本にとって、ODAによる援助が重要であることに変りはない。ここでは、ODAを初め、日本が公的機関を通して途上国の人材育成や知的貢献といった人的貢献を行う上で直面する問題点を考える。国連機関を通しての人的貢献と人材育成の問題点80年代半ばより始まる日本の急激な円高は、日本から国際社会への資金面での貢献を容易にしたものの、反面、日本人の労働コストを著しく上昇させ、国連機関における日本人による国際プロジェクトの参加の機会を狭めてきた。即ち、国連機関のプロジェクトは、一定額以上のものについては通常、競争入札によって決まるが、日本企業の提案価格は、他の欧米諸国のものより割高でコスト競争力がない。また、入札書類は英語で用意する必要があり、それに要する時間も作業も膨大であるため、ほとんどの日本企業は国連機関を通した多国間援助よりも、日本語で参加でき競争も日本国内に限られているJICA等を通した2国間援助に注力してきた。こうして現在極端に少なくなっている日本の国連機関を通しての人的貢献を増やそうという動きは、まだ一部で始まったばかりである8。1208M. Nishiguchi,“UNIDO Business Model ? Strategies for Increasing Japanese Companies’Involvement into UNIDO’sProcurement System”, UNIDO ITPO Tokyo, Dec 2001.