ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第18回優秀賞価体制の改善をODA主要改善項目の一つに据えている。財政的支援での金額と言うわかりやすい指標に代わり、人的貢献の評価を客観的に現す指標が必要とされるわけである。特に、ODA評価体制の改善について外務省は、2000年9月にDAC5評価作業部会との共催でワークショップを行う一方、評価人材のデータ・ベース化やJICAや国際協力銀行(JBIC)とのネットワークの構築を準備中であるという6。ODAの場合、支援を受ける途上国側が支援に対する評価を行った場合、公正な結果が得られるとは限らない。支援を無償で受ける場合、「どうせ、ただなのだから」あるいは、「今回は駄目でも、次回の支援に繋ぎたい」といった理由で、途上国側が良い点数をつけるとも限らないからである。一般に、途上国にとっての支援の効果は次ぎの3つに大別できる。1役に立っている。2あってもなくても構わない。3かえって迷惑。上記のうち1はともかく、2になると税金の無駄使いであり、3に至っては、国家の損失であると同時に外交問題にもなりかねない。もちろん、3になるような不幸なケースは稀であるだろうが、人の心を覗いて見るわけにはいかないので、いくら調査を行っても本当のところはわからない。また、受入国の反応と支援を行った日本人の自己評価は必ずしも対応するものではないという。というのは、現地で受け入れられないと大変な思いをした人が、自分ではそれと気がつかず現地の人々から歓迎されていたこともあるし、自信満々の人が実は現地では受け入れられていなかったこともあると聞く7。逆に、支援を行う日本人からは次ぎのような感想が聞けるだろう。1よい経験だった。2よかったかどうかわからない。3行かなければよかった。途上国支援が、単なる途上国のみのためではなく、日本人にとっての貴重な国際経験を得る手段、あるいは日本人の国際教育の場であってみれば、日本人自身の感想も見過ごせない。5DAC: Development Assistance Committee(開発援助委員会)。6外務省「我が国の政府開発援助」2001年5月。7渡辺文夫『異文化コミュニケーション学会リトリートでの講演』から引用、2001年11月3日。119