ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

国連と安全保障―「現実」を越えるための試験的考察―第29回優秀賞向山直佑要約「国際連合」―それは他に類を見ない国際機関である。昨今非政府組織(以下、NGO)や非営利団体(以下、NPO)などの国境を超えた活動が活発化してきたと言われ、様々なフィールドでの活躍が連日報道されているが、こうした団体と国際機関には本質的に定義上の差異がある1。その中でも国際連合は、地球上の殆ど全ての国家(未承認国家の問題は置くにしても)をその構成員とし、政治・経済・文化等の面で世界の政府の総意を代表する意味で最も強力な権威を持つ、他のどの国際機関とも性質の違う存在である。それだけに、設立以来、いや国際連盟の時代から、寄せられる期待は非常に大きかった。中でも国家の、あるいは人々の安全を保障するという点において、悲惨な大戦を引き起こした反省から集団安全保障を志向した国際連盟が第二次世界大戦の勃発を食い止められずに惨めな失敗に終わったことを受けて、大幅に強化され集権化された集団安全保障体制を打ち立てた国際連合への期待は、設立当初非常に大きく、そして理想に満ち溢れていたに違いない。しかしながら、冷戦に伴いまたもや国連の下での集団安全保障体制が機能不全に陥ったのは、周知の通りである。安保理は大国の利害対立によって麻痺し、国連軍の設立という当初の構想は顧みられないまま、本来憲章が想定していなかった国連平和維持活動(以下、PKO)によって、部分的な平和への貢献が為されるに留まった。それでは冷戦の終結によって国連の貢献度は飛躍的に向上したのだろうか。確かに、冷戦の終結と湾岸戦争での成功によって集団安全保障体制への期待は再び大きく膨らんだ。だが旧ユーゴスラビア、ソマ1 国際組織(国際機関)は、国家をそのメンバーとする組織であり、国家間の合意に基づいて創設された、一定の機能を遂行するための帰納的団体であり、常設的な機関を保持するものである。一方NGOなどは、個人ないし私人を構成員とし、依拠する合意は国家によるものではない。小寺他(2004)181-183頁1037